春の到来を感じる瞬間。樹々の緑、花の香り、野鳥の声、さまざまな場面で春を感じさせますが、一番はやはり気候でしょう。寒い冬を越えた少し眠気を誘うようなあたたかい日に春を感じてしまいます。さて、春の『81』劇場。コの字を描く漆黒のテーブルダイニングに春の陽が射してくる。もちろん陽の役割を果たすのは永島シェフの手による料理達だ。
前菜から春を感じさせる。
中はリキッドのまま成型したオリーブオイル。色や香りや風味は春の訪れを表現し、べジョータの旨味の余韻が心地よさを与えてくれる。
スープには「ボタンエビとそのビスク」ボタンエビの身からは甘さが、ビスクからは甲殻類ならでは旨味が凝縮。
冬から春にかけて旬を迎えるボタンエビも春を意識した素材だ。身とスープに温度差を設けているのも同様だ。
春のプレゼンは終わらない。厚めにコーティングされたチョコレートに香りのいいフォアグラとブランデーを。
シンプルな塩のみの味付けが素材自体を際立たせる。厳しい冬の寒さの先にある春の表現だ。
そして、レストランには緑が色づき始める。
旬のアスパラガスがホワイトとグリーンで彩りを添える。まるで冬と春のようですね。ベースとなるピューレは、やわらかくねっとりとして温かい。花自体の器に色を作ります。
続くのは春トマト。
トマトの旬は夏のイメージだが、春も第2の旬といわれているそう。炊かれた身は柔らかくて温かい。トマトの甘味と酸味に加えて、山椒での香り付けや鰹節の出汁とあわせた3層で構成される。
春の訪れは山や畑だけが証明するものではない。次は海の出番だ。
登場したのは伊勢の真鯛。別名はずばり桜鯛だ。身は低温でしっとり焼き、皮は炭火の熱風で高温で焼き付ける。
まさに温度のコントラストで春を表現しているのだ。
仕上げに注がれた抹茶が海、炭を練りこんだパンは岩といったところだろう。
いよいよクライマックス。最初のサプライズは「81のハンバーガー」だ。永島シェフの作るハンバーガー、これは見ものだ。
焼きあがったばかりのバンズにはブリオッシュ。最も美味しいタイミングでの提供だ。その一瞬を逃さないのは提供時間を計算できる81ならでは。
黒毛和牛の希少部位で作ったパティ、最高級チーズの白かびのカマンベール、ハウスシャンパンであるドンペリ。ハンバーガーという料理が昇華されていく!こんな贅沢なハンバーガーが他にあれば是非教えて欲しい。
サプライズの2つめは81のスペシャリテである「カルボナーラ」自身のスペシャリテにメスをいれる勇気に驚いた。なんと2層構造になっているだ。これは「カルボナーラの再構築の再構築」とでもいえばよいか。
永島シェフの科学は想像を超える。殻のままにもかかわらず白トリュフの香りは健在。いったいどうやって!?パンチェッタの旨味、黒胡椒のアクセントは相変わらずだが、リゾーニを使用しているは新鮮だ。
最後のデザート。まるで舞台のカーテンコールのように、スタッフ総出でデザートを盛り付ける。
永島シェフがスーパーレアチーズケーキを。そして、ベリー、ブルーベリー、ブランソワーズなど器を春色に染めていきます。
これで終わりではない。舞台だって最後にアンコールがあるではないか。
最後の驚きは「香りそのもの」。なんとシャネルの香りそのものを食べるのだ。パフュームを食べたのは初めての経験。
今回は大好きな先輩にアートディレクターとその奥様をご紹介いただきました。春は出会いの季節。ハッピーなディナーとなりました。記念撮影をパシャ!
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1回目の訪問
「生と死。破壊と創造。今宵はディナーではなく芸術作品を見た!@81」
https://blog.33inc.jp/2015/10/29/81/
2回目の訪問
「冬の「81」劇場。今度はロマンティックバレエの幕が開く!@81」
https://blog.33inc.jp/2016/01/18/29597/
81
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東京都港区西麻布4-21-2 コートヤードHIROO
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130703/13186404/