
いろんな意味で六本木らしい。ビルの8階という場所柄、夜景を望むことができます。ゆったりしたカウンターからの光景も然りだが、特に個室からは東京タワーも見渡せる。宙に浮かぶお寿司屋さんは好まないのですが、なんだか六本木っぽくて嫌いじゃない。
いわゆるデート向けというか女性との会合向けにもいいですね。その証拠に店のピークは、早めの時間と遅めの時間に2つの山を持つ。いわゆる同伴とアフターですね。ますます六本木っぽいです。
今宵のディナーは21時過ぎ。逆にクラブのピーク時間が狙い目。夜景はおろか大将との楽しい話まで独占できます。さて。料理は「大将おまかせ特選コース」のみ。最初は小鉢で出迎えてくれます。「香箱ガニ」。いわゆる北陸産のズワイガニの雌。

外子にはジュレに仕上げて酸味を追加。蟹身と内子が贅沢に施されます。舌は嬉々として喜ぶが、右足の親指の付け根には攻撃的である。(痛風なんです、実は。)
二品目にさっそく名物が登場。「金目鯛のバッテラ」です。

店名にも「鯛」がつきます。器までも鯛をかたどったものです。金目鯛の粘り気の先には、干瓢の甘さや紫蘇などの香味、ガリの酸味に胡麻の風味と、輻輳的な味が深みとして認識されます。
薄造りの「カワハギ」で肝、ポン酢のムース、めねぎを巻いて。口の中で全員溶けていく。一方の握りは甘鯛の王様の「白川」は身がしっかりして美味。

ここからも鯛良の本領発揮。1つのネタで2種類の食べ方を提案してくれる。素材の同士の戦いでもあり、大将のアイデアと客の舌との対決である。
「墨烏賊の握り」VS「白いか」ねっとりした墨烏賊に対して、白いかはフォースラディッシュやおかかやネギを混ぜたものと頂く。これは単品でもつまみとしていけるレベル。


「鯖の握り」VS「鯖の刺身」握りは1日熟成の鯖、刺身には3日熟成の鯖。しかも後者は藁焼きにして風味をつけます。藁に炙られながら、自身の脂で旨味ができあがるのですね。素晴らしい。


「鰤の握り」VS「鰤の照り焼き」握りは一週間の熟成。ねっとりした旨味と柚子の爽やかさを追加。一方のつまみとなる照り焼きは脂が重いほど強い。そこに長芋のわさび漬けをのせることで解決してくれます。


「鮑」VS「鮑の肝ソース」柔らかい鮑はさておき、肝のソースにシャリを混ぜてくださいと創作作業を委ねてくれます。この肝ソースが絶品なんです。


「金沢産のどぐろの炙り」VS「長崎産のどぐろの焼き物」共に脂がのっていて贅沢の極み。特に長崎産の西京焼きは溶けていくほど。これは絶品。


「蟹味噌とほぐし身の握り」VS「蟹の足」足は一気に食べましょう。ボイルしたほぐし身と蟹味噌を和えたお鮨。これは反則です。

「づけ」VS「中トロ」熟成されたものとの比較は勉強になります。

随所に一品料理も挟んでくれる。
「魚介の白湯スープ」甲殻類の味が強いが、海老や蟹に加えてあさりや魚のアラまではいっているそう。米が作るとろみが体の芯まで温かさを届けます。その他、「海老芋」や「ふぐ皮」など充実度が高い。
「小肌」「車海老」「馬糞雲丹」「穴子」「玉子」最後は怒涛の握りラッシュが続いて、味噌椀で〆る。日本酒のアテは肴だけではない。冒頭で紹介した夜景ももちろんだが、何より大将との軽快なトークが楽しい。これも六本木らしいサービス精神の1つか?
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鯛良 六本木店
050-5868-0586
東京都港区六本木6-2-35 六本木662BLD 8F
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13108409/